プリミティブの中にある 〜 ヘンリー・ムア 生命のかたち
2010-09-06


ヘンリー・ムア(1898-1986)は、20世紀を代表するイギリスの前衛的な彫刻家です。人体をデフォルメした彫刻は、シュルレアリスムの絵画に出てきそう感じがします。以前にも作品は見たことはありましたが、どんな人物であるかまではよく知りませんでした…なので、彼の簡単な経歴から調べてみました。

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彼は小さい頃から粘土などで造形を作るのが好きだったようです。それで彫刻家を目指すようになったのですが、18歳のときに第一次大戦のため徴兵されてしまいます。戦争で負傷をしますが、大きな傷とはならず退役をむかえました。

ロンドンの王立芸術大学(Royal Collage of Art:RCA)で彫刻を学びますが、古典的な表現に疑問をもち自らプリミティブな表現を研究するようになったようです。10年近くRCAで過ごした後に結婚をして、ハムステッドに移り前衛的な芸術家のグループを作り作品を発表していくことになります。

数年後、第二次大戦がはじまり、今度は戦争画家として従軍することになりました。ハムステッドは空襲を受け崩壊、マッチ・ハダムという小さな村に移住して終戦をむかえます。この時期に待望の娘を授かり、母と子をテーマにした作品を作りはじめます。そして、1948年にヴェネツィア・ビエンナーレ展で国際彫刻賞してから、その知名度が世界に広がっていきます。

さて、展覧会の内容ですが、戦後の彫刻6点の他にパステルや水彩、リトグラフなど40点で構成されています。小規模ながら代表的な彫刻『母と子(ルーベンス風)』や『横たわる人体』に加え、ストーンヘンジを描いたリトグラフとめずらしい作品も展示されています。

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彫刻は単純な形であるが故に、考え抜かれた安定の形、人への想いを 感じることができます。例えば、『母と子』であれば、母と子が向き合い互いに心を寄せ合う姿が自然であり、微笑ましく見ることができます。単純化された形がシンプルでダイレクトに表現したいものを伝えていると思います。

彼が生涯に渡ってテーマにしたことは、人体であったそうです。そして、それはプリミティブの中にあると考えていたようです。太古の昔に秘めた力強さや単純で素直なところに人体の本質があるのだと思います。そこから沸き上がるエネルギーがこそが、彼が作品にしたかったものだったのだと思います。

※ブリヂストン美術館(2010年7月31日〜2010年10月17日)
[展覧会]
[*彫刻]

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