きれいな戦争 〜 安彦良和原画展
2006-08-10


この夏に長野にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」を訪れる計画をしていました。しかし、残念なことに事情があって実現はできませんでした。戦争については、国でも、個人でも、その受け取り方がバラバラなのが現状です。

芸術を愛し絵を描く人たちにとって、戦争とはなんだったのだろうか? それを感じることができるかもしれないと言うのが「無言館」に行きたかった理由です。本物の戦争が、そこにあるのだと思います。

なじみのあるテレビアニメにも、数多く戦争を背景にした作品があります。「ガンダム」と言えば、社会現象にもなるほどの人気シリーズです。シリーズに登場するモビルスーツと言われるロボット同士の対決が男の子に人気があります。しかし、その背景には、地球に残った人々と宇宙空間に移民した人々との戦争が描かれています。

安彦良和は、その人気シリーズの原画を描くアニメーターです。不透明水彩で描かれた優しい瞳のキャラクターと巨神を思わせるロボットが純粋さと雄大感を与えます。近未来の「ガンダム」よりもギリシャ神話や古事記を扱った作品の方がシックリとくるのが不思議です。

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安彦良和「アリオン、1986」

古代の戦争も、近代の戦争も、人と人が殺し合うことには、変わりありません。ただ、古代の戦争においては、戦士同士が戦う武士道のようなロマンを感じることも確かです。たぶん、彼の作品には、この武士道的な感覚が組み込まれているために、戦争の惨劇が弱められて伝わるようにも思えます。

現実の終り無き戦争をみると、やはり戦争は、惨劇で直視する人々には理不尽さと恐怖が付きまといます。「ガンダム」と言う作品が、けして戦争肯定をしているわけではないと聞いたことがあります。しかし、現実とのギャップは、無いとは言えないのも事実でしょう。人の歴史にきれいな戦争など一度も無かったと思います。

※八王子夢美術館

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